「……妹」
「は」
心地良さそうに目を閉じながら、くるみはそう一言呟く。
最初、聞き間違いかと思った。
“妹”
確かに、くるみはそう言った。
「妹?」
口を開かないくるみの代わりに、俺が尋ねる。
それにくるみはコクンと頷いた。
「……いたの」
「は」
「私の生き別れた妹。
会いに来てくれたの」
「…………」
初耳だった。
妹がいるだなんて。
こんなに一緒にいるのに、改めて俺はくるみの事を何も知らないんだと思った。
それが悔しいとも。
「私の両親ね、離婚してて。
私は父親の前妻の子供。
妹は両親の子供。
だから、風当たりは強くって」
くるみは天井を仰ぎながら、ぽつりぽつり言葉を零す。
しっかりと俺の手は握られていて、その額には濡れたタオル。
熱でピンクがかったその頬を俺は見つめた。
「まあ、当たり前だけど離婚した時私は母親には引き取られなかったの。
だからと言って、父親にも引き取られなかった。
私の事、面倒見てくれたのは…父親の姉だったの」
初めて自分の過去を話すくるみの言葉を、聞き逃さない様に俺は黙ってただくるみの手を強く握る。



