誰もいない通りを歩く、俺とくるみ。
帰ろうかってなったけど、くるみを一人で帰らせるのは心配だったから。


だから、送っている途中。
…二人のその手はしっかりと繋がれていて。


さっきまでこの距離が遠く感じていたのに。
今はこんなにも近い。

まさか、くるみが俺の事を好きだと思ってくれていたなんて思わなかった。


“千里が好き”


それはまるで魔法みたいで。
俺の心の内側にいとも簡単に沁み込んで来て。


伸ばした手の先にある温もりを、“愛しい”と感じた。
そうして、この感情が“好き”だと言う事に気付いた。


「千里」

「ん?」

「彼氏なんだよね」

「そうだな」

「私の彼氏なんだよね」

「……そうだよ」


何度も確認する様に聞く、くるみにふっと笑いかける。


「俺がこんな感情持ったの、久々なんだから…信じろよ」


まだ不安そうに俺を見上げるくるみは、二十歳にはとてもじゃないが見えない。
きゅうっと、握る手を強めてくるみはぎこちなく微笑んだ。