「気に入らなければ辞めればいい」

「………」

「楽にお金を手にして、親孝行してやれ」

「………本当に辞める事出来るんだよな?」

「ああ、出来る」

「…………」


そこまで聞いても、やっぱり俺の不信感は拭えない。


「まあ、いい。今度、ここに来てみるんだ。
ここは事務所だ。日曜の午後。仕事の説明をする」


それでも、俺が好意的に頷く事はなく。
ただ、黙って渡された紙を見つめた。

西園寺康弘はやっぱりそんな俺に声をかけることなく、不敵に微笑むと去って行った。


西園寺が去って行った後も、俺はその紙を暫く見つめ続けていた。
地図が描かれたなんてことない紙。
だけど、畏怖する気持ちと、好奇心とが入り混じり、不思議な感覚だった。


行くだけ、行ってみるか。


全面的に信用したわけではないけど、あんなにはっきり辞めたい時は辞める事が出来ると言ったんだ。

それに…お金は必要だった。