「久しぶりだな」


そう、前と変わらない低い声で俺を見て笑った。
もう日付が変わりそうな時間だっていうのに、西園寺康弘は真っ黒のサングラスをかけている。
以前と同じ様なぴしっとしたスーツ。


「…………」


唖然として、言葉が出てこない。
まじでまた会えるだなんて思ってもなかったし。


本当に会えた、だなんて感動するわけない。
恐怖すら感じる。



「千里、女に仕返ししてみたいと思わないか」

「……どういう事ですか」

「なあ、母親楽にさせる為にはお金が必要だろう」

「………」

何で名前知ってるんだよ。
俺、名乗ってねえし。

それにどうして、母親の事知ってるんだ。



「私が紹介する仕事なら、簡単にお金が入る」

「……なんか、危ない仕事なんだろ?」

「いや、ただ女の相手するだけだ」

「ホストならお断りだ」

「ふはは、ホスト?一緒にするな。値段が違う」

「………値段…?」

「ああ、そうだ。値段が違う」

「……………」


どうして、この男はここまで自信たっぷりなのだろう。