家を飛び出たのはいいものの、お金も携帯もない俺はただ夜道を歩くだけ。

一人で、誰もいない道を静かに歩く。
誰も俺なんか気に留めない。


通り際ちらっと俺を見ては、携帯か、前方へと視線を移す。
この時から、既に俺は疎外感と言うモノを感じていたのかもしれない。


それが何なのか、分からなかったから。
俺はむしゃくしゃしてたのかもしれない。


ただ、愛情を求めていただけだと。


もっと、早くに気付けていたら。




駅前まで歩いて、俺は路頭でボーっと空を眺めていた。
これから、どうしようか。
簡単に帰ることなんて出来なかったし。

今日は。
野宿かな。


「ねえねえ、彼女。可愛いね、今暇?」


俺の目の前を颯爽と女の人が横切る。
その後ろから、ナンパ男が必死に声をかけながら着いて行く。

その女の人はうんざりした顔を見せて、ナンパ男を睨もうとして。
―――――俺を見つけた。


ぴたりと止まる彼女。
俺も、空から彼女へと視線を移す。


ナンパ男は自分に興味が沸いたのかと勘違いをし、これでもかと話をする。
だけど、それを全て無視して俺へと近付いた。