「………」


まだスヤスヤ寝息を立てている愛の頬をそっと撫でる。
それから、布団から抜け出ると俺は風呂へと向かった。

体を流して、風呂から出ると愛が起きていた。

ベッドから降りて、まだ寝ぼけた顔でタバコを吸っている。


「起きてたのか」

「おはよー、千里」

「はよ」


タバコをもみ消すと、愛は一度大きく背伸びをした。
それから俺を見ると、

「どっか出かける?」

そう言ってニヤっと笑った。


「どっちでも」

タオルで頭をごしごしと拭きながら俺も返事をする。
その返事が不満なのか、愛は頬を膨らませていた。


「行こう行こうー」

「行くなら聞くなよ」

「だって、行こうよって言って貰いたかったんじゃん」

「…何だそれ」

「いっつも私からじゃん。千里に誘って貰いたいの!」

「………あー……」


困惑する俺。
思い返せば、俺がどこかに自分から誘うって事…なかったような気がする。
いつも、行きたい場所に連れて行っただけだから。


そこに、俺の意思はない。