「…愛?」

「バカっ」

「……何が?」

「嘘つき」

「………」


ドンと、一度俺の胸を叩く。
もう一度。

ドン、ドンと、力なく叩く。


その腕をきゅっと掴むと、俺は起き上がって愛を包み込むように抱き締めた。
その腕の中で、まだ愛はドンっと俺の胸を叩く。


「好きなだけ、やればいい」


愛の髪の毛に俺は指を絡ませた。
それから、優しく上下させる。愛でるように。


「…ど、う、して…」

「何が」

「私っ、いじわ、るばっか」

「…それで」

「なのにっ、ど…うして優しい、の?」


泣きながら紡ぐ愛の言葉を聞いて、俺ははあっと溜息を漏らす。
それから、ゆっくりと一言一言愛に諭す様に言った。


「…俺は優しくない。寧ろ、冷たいと思う」


愛は顔を上げて、首を横に振った。
そんな事ない。そう、言う様に。

だけど、俺は眉を下げて嘲笑してから話す。


「今の俺が優しいと思うなら…愛がそれだけ、優しさに飢えてるって事だ」

「…………」

目を見開き、俺の顔を見てまたポロっと涙を零した。