「……千里」


薄ら目を開けると、俺の腕に抱かれて眠る愛がいた。

俺が起きたのを確認すると、俺の胸に顔を猫みたく擦り付ける。


「あったかい」

「そうか」

「千里って、無口だよね」

「…そうか」

「まあ、私が喋るんだからいいんだけど」

「………だな」

「ねえ」


起き上がると、愛は俺を上から見下ろす。
髪の毛が顔に当たって、くすぐったい。


「私の事、好き?」

「………好きだよ」

「本当に?」

「ああ」

「じゃあ、キスして」

「………」


目の前にいる愛の頭を強引に引き寄せて、俺は唇を重ね合わせる。
角度を変えて、何度も口内を犯した後ゆっくりと愛の頭を離した。


「…………っ」


ぽたぽたと、それが俺の頬に落ちる。
愛は顔を歪ませて。

―――――…涙を流していた。