「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「ほーらー、ランチ早く食べるのっ」

「はいはい」

「はいは一回！」

「………はい」


涙で、マスカラやアイラインが取れて、少しパンダになってたけど。
だけど、その時見せた愛の笑顔は綺麗だった。


引っ張って連れて行かれた場所は、パーティー会場の様に広々としたフロアにバイキング形式で食べ物が置かれていた。
中華、和食、洋食、デザートまで。様々。
その種類の多さに目移りしてしまいそうになる。


「あ、風太」

「フウタ？」


何だ、その動物みたいな名前。

愛は俺の手をぱっと放すと、一人のスタッフの元へと走り寄る。
すらっとしてはいるが、パッと見、冴えない。

きちっとしてるのはホテルマンだから当たり前なんだけど。


「愛お嬢様、顔どうなさったんですか」


風太と呼ばれた男は愛の顔を見るなり、びっくりした様子で声を出す。
愛は「あははー」と笑うだけ。


「泣いたんですか？
…まさか、あの男に？」

「えっ？千里？違う違う」


俺の顔をキッと睨みつける風太を俺は仕方なしに見る。
別に泣かした、で構わないんだけども。


愛の弁解も彼は聞く気はなさそうだ。