「愛」 -レンタル彼氏-【完結】

「…平気か」

「………無理」

「……そうか」

「何なの、本当に」

「何が」

「千里よ、千里」

「…………意味がわかんないんですが」


愛は涙で濡らした瞳で俺を見上げると、

「バーカ」

そう言った。


「………」


それにかなり面食らった俺。


「はは、うける。その顔」


ケタケタ笑って、俺の腕から離れて行く。
それから、手を取ると引っ張った。


「遅くなっちゃった!じい、心配しちゃう」

「顔は」

「いいよ、そんなの」

「え」


それは俺が困るんだけど。
泣かせたみたいじゃんか。
……いや、泣かせた、のか?


じゃあ、いいのか。

愛のこの少し強引なとこが、実は助かってたりもする。
返品と言われて、戸惑って。
どう、考えたらいいのかわからなかったから。


一人でいたくなかった。

だから…凄く助かっている。



泣いた理由もわからない。
それを聞いていいのかもわからない。

愛は金持ちで、何不自由ない暮らしをしているはずなのに。

……何かあるんだって事だけはわかった。