「私は嫌だよ、律が悪く言われるのは」



切ない気持ちでギュッと高柳の腕にしがみついた。

そんな静奈を引き寄せて抱きしめる。



「俺だって前はふざけんなって思ったよ。でも…」

「でも?」

「もし自分なら、って思ったんだ。」

「どういうこと?」



静奈は高柳を見上げる。
優しい眼差しが返ってきた。



「もし、俺が圭子さんの立場だったらって。」



もし、圭子のように大切な相手に裏切られたら、その相手家族を認めることは出来ない。


裏切られた。
辛い。
悔しい。
悲しい。


全ての感情が相手に向いてしまうのも無理はない。