「ごめんなさい!やっぱり私帰ります」

「橘!」



高柳はとっさに、ベッドから降りようとする静奈の腕を掴み引き戻した。

ベッドに引き戻され倒れた反動でスプリングが弾む。



「あ、ごめん。…って…え?なんで泣く?」



押さえ切れなかった涙が顔を覆った手の間から頬に流れ落ちる。



「…泣くほど…嫌か?」


高柳が切なそうな声で聞く。



「泣くほど俺のこと嫌いか?」



静奈は顔を覆ったまま首を横に振る。



「無理しなくていい…。少しは距離が縮まったと思っていたけど…お前、俺のこと苦手だったもんな…。ごめん…」

「違うんです!」



落胆したような、申し訳なさそうな声で覆い被さって謝る高柳が起きあがろうとしたのを静奈は否定して止めた。



「違うんです…。そうじゃない…」

「橘…、いいから…」

「逆なんです!」



静奈は顔から手をどけて高柳を見上げる。