高柳は会社に戻ると、ロビーのソファーに座る友香を見つけた。


その姿を見て、ハァと息をつく。



「何してんだよ」

「待ってたのよ。」



友香は笑って立ち上がる


「人がいない間に、止めろよな」

「もうしないわ。さっき電話でも言ったでしょ?」

「…あぁ。そうだな」



高柳はボソッと呟いた。




―……


静奈はエレベーターから降りて、友香の姿を探した。


もう会社を出てしまっただろうか。

そう思いながらキョロキョロしていると、友香が自分の名前を言う声が聞こえた。



「あの橘って女の子。」


ドキッとして振り返ると、ロビーのソファーに友香の姿があった。

そしてその前には、後ろ姿だが見覚えのある背中が見えた。

高柳である。静奈はとっさに柱の影に身を隠してしまった。



「橘に何かしたのか?」
「してないわよ。ちょっとイジメちゃったけど」


友香の苦笑する声がする。静奈は2人の会話を聞いちゃいけないと思いつつも、そこから動けなかった。



「友香、何してんだよ」
「悪かったわよ。反省してる。ねぇ、でも律さぁ」

「あ?」

「あの子のこと本気で好きなの?」



友香の言葉に静奈はドキンとした。

高柳は黙っている。

駄目だ。ここにはいてはいけない。

そう思うのに身体が動かなかった。