「俺を試すような事を言うなんて可愛くない弟だな。」



拗ねたような口調の社長に高杉秘書は苦笑する。


「それ程お二人の距離が縮まったということじゃありませんか。」

「…わかってるよ。」



高杉秘書は資料を机に置きながら社長の表情を盗み見た。

本当は嬉しいのだろう。
社長に対していつも距離をとっていた高柳が最近は社長に心を開いている。それは高杉の目にも明らかだった。

高杉は2人の関係を知らされている数少ない人物の一人だった。

だからこそ社長の想いは知っていたし、それを拒もうとしていた高柳の気持ちも察していた。

しかし、最近は高柳の方に変化が出てきたといえる。

高柳自身の心に少しずつ余裕が出てきたのだろうか。
表情や雰囲気が昔のように冷たいものから、落ち着いたものへと変化している。


やはりそれは――



「静奈ちゃんのお陰だな」



社長も同じことを考えていたのだろう。

窓の外を見ながら呟いた

彼女の存在は大きいだろう。



「えぇ。そうですね。」


高杉秘書はにっこり微笑んだ。