「この会社をここまで大きくしたのは俺だ。取引先のひとつをなくしたくらいでどうこうなるような会社にしたつもりはないんだが?」



明らかに腹を立てた社長を高柳は落ち着いてみていた。いや、むしろ軽く微笑んでいた。



「そう言っていただけると思っていました。」

「…お前…、チッ。俺を試すな。」


社長はふてくされたようにもう一度椅子に座り直した。



「試してなどいません。ただ社長のお気持ちを知りたかっただけです」

「…俺が結婚に賛成だったらどうしてたんだよ」
「さぁ…。その答えは予想していなかったのでわかりません。」



意地悪な笑顔を向けてそう言う高柳に社長は口を尖らせた。



「ならお前がなんとかしろよ。俺はあっちの社長が何言おうと介入しないからな。」

「そのつもりです」



高柳は初めから自分で蹴りをつけるつもりだった。

社長同士が介入すると話が大きくなる。だからけそ我が社長は本格的にそうなる前に高柳に任せたのだ。


高柳が社長室を出て行ったのを入れ替えに高杉秘書が入ってきた。