静奈が笑顔を向けていると再び同じことを聞いてきた。



「本気で思ってるのか?」

「もちろん」

「じゃぁなんで作り笑いするんだよっ」



苛立ちを抑えず、高柳は言葉を強める。

ハッとした静奈は高柳を見た。眉を寄せた高柳が静奈を見ていた。



「本気でそう思ってるならなんで作り笑いなんかすんだよ。友香のことがあるとお前いつも作り笑いしたよな。俺が気付かないとでも思ったか?」
「高柳さん…」



冷たい目ではなく、ただ真っ直ぐに見つめてる目に耐えられず下を向いた。その視界にベッドに腰掛ける足元が見える。



「橘…」



静奈は高柳の声に頭を振った。
どうして?
作り笑いしたからってどうだっていうの?
高柳さんには友香さんがいるのに…。

静奈は唇をキュッと噛んだ。



「おめでとうございます」

「橘…」

「おめでとうござい…」


言葉を繰り返す静奈の頬に高柳が触れる。
その手に身体が震えた。


「泣くなよ」



大きな手が頬に流れる涙を拭う。

我慢していたものがいつの間にか溢れていたのだ。

もう限界だった。一度流れ出した涙は止まることは出来なかった。


涙で肩を震わせる静奈を高柳が優しく包み込む。