その声に背筋がゾクッとする。

身体が溶けそうになる。


でも、それと同時に頭のどこかでは冷静になるのだ。

なんだか違うと。
ここで流されるのはなんだか違うと思うのだ。



「よ、酔っ払いは明日頭痛くなればいいんです!」



腕に力を入れ、高柳を押し戻す。

赤面しながら昨日高柳のセリフを言うと高柳は苦笑した。



「よく覚えてんじゃん。冗談だよ、からかっただけ。」

「酷いです!」

「そっくりそのまま返します。」

「う…」



言葉に詰まる静奈の頭をポンと撫でた。



「悪かったな。じゃぁな」



そう言って車を降りて行った。


“悪かったな”


それは冷たくしたこと?

からかったこと?


静奈はマンションに入っていく高柳の背中を見ながら涙が出そうだった。

高柳がわからない。



もしあの時、流されてキスしたら?

高柳はどうしていたのだろうか。


受け入れてくれただろうか。


それとも…。




素直になるのが怖い。

やっと近くなってきたから、だから余計に不安で怖い。
高柳にとって自分はどんな存在なんだろう。



高柳の気持ちがわからない。


本気かただからかっているのか。


わかりたくて、でもわかるのが怖かった。