高柳は歩きながら後ろを振り返る。

しかし静奈の姿はそこにはもうなかった。


あんな表情を見たのは3年ぶりだろう。泣いてこそいなかったが、今にも泣き出しそうだった。


取引先と仕事で何かあったらしいと耳にしていたが、詳しい詳細はわからなかった。


大丈夫だろうか。



「律?」



友香が高柳を覗き込んだ

向かいに座る黒い大きな瞳が高柳を見上げる。


友香が選んだのはオシャレなイタリアンだった。 昔からこういったオシャレな店が好きだった。



「好み変わってないな」
「そう?大体女子はこういった所好きでしょう」


女子は好き、か。

高柳の周りの女子で思い浮かぶのは貴子か静奈だった。2人は大抵、会社近くの居酒屋を好んでいた。


静奈なんてベロベロに酔っ払っていた。


そんな事を思い出していると、高柳を見つめる静奈と目が合った。



「何?」

「なんか…律、変わったよね。」

「何それ」

「昔はもっと周りを寄せ付けない感じだったのに。」



不満そうに口を尖らす。


「そうか?お前は変わんねぇな。」

「良い女になったな、くらい言ってよ。これでも社内ではモテるんだから」

「それは良かったな。男いないのか?」

「残念ながら。律と一緒ね。」

「一緒にすんな」

「何それ。彼女でもいるの?」

「お前には関係ない」

「律!」



膨れる友香に高柳は軽くため息をついてフォークを置いた。