静奈が呟くと、眠そうに欠伸をしていた男はチラリとこちらを見た。
「俺の名前知ってんだ?」
寝起きの低い声は掠れていて甘い響きをしている。
しかし静奈にはそれはどうでも良いことだった。
問題は何故、自分が我が社の営業課エースの高柳律と居るのかということである。
静奈は彼をよく知っていた。
「あの…ハイ、会社で有名ですし…。あの…」
テンパる静奈に高柳は「へぇ」と興味のなさそうに呟き、部屋のドアを指差す。
「とりあえず着替えたいから出ててくんない?」
「あっ!ハイ!すみませんっ」
Tシャツを脱ぎかけた高柳に慌てた静奈は転がるようにドアへ向かった。



