その日の帰り。


静奈が会社のロビーを歩いていると後ろから肩を叩かれた。



「静奈ちゃん。」

「上村さん」



振り返ると上村が笑顔で立っていた。

鞄を持っている様子から上村も帰りのようだ。



「静奈ちゃん、今帰りなの?」

「えぇ、まぁ」

「良かったらご飯行かない?」

「え?」



思わず言葉に詰まってしまった。
そんな静奈を見て、上村は苦笑する。



「警戒されてるなぁ。何を聞いたか想像つくけど。大丈夫、やましい気持ちはないから。」



困ったように笑う。静奈はしまったと思った。つい上村に対して失礼な態度を見せてしまった。



「警戒するならお酒呑まないようにすればいいし。夕飯食べるくらいいいんじゃない?だめ?」



この前のように強引ではなく優しく聞いてくる上村に静奈は頷いていた。
一度くらいいいだろう。

二人は会社から近い、以前、貴子と3人で呑んだお店に行くことにした。