「でも、俺はあいつを一生営業にしとくつもりはない。」



そのハッキリした言葉にハッとする。



「あいつには上にくる権利がある。実力もある。」

「だから今、あぁして仕事を?」

「あぁ。いつか必ず、俺と同じ景色を見せる。でも今はまだ時期じゃない。営業課の問題もあるから、あいつにはまだあそこにいて貰わなくちゃならない。」



“だから”と社長は言った。



「兄弟のことはまだ公表出来ないんだ。」



静奈は頷いた。
社長が静奈を待っていた理由はこれだ。
念を推したかったのだろう。



「社長、大丈夫です。誰にも話したりしません。私、これでも社長秘書ですよ?会社の不利益になるようなことはしません。安心して下さい。」



社長をしっかり見つめて言った。
秘書が社長の、会社の足を引っ張ることはしたくはない。



「ありがとう、静奈ちゃん。静奈ちゃんなら大丈夫ってわかっているけど、一応ね。」



そうホッとしたように話す。
そして静奈はフッと思った。



「営業課の企画リークの件、まだ解決してないんですか?」

「あぁ。しかも、企画だけじゃなく、まぁ、大したことはないが、他の情報も流れている可能性がある。」

「それ…誰が…」

「さて、な。律と高杉が調べてくれてるが、まだだな」



高柳も高杉も自分の仕事片手に調べている。しかし、まだハッキリしていないようだ。

しかし情報が漏れるのはかなりマズイ。

誰がそんなことを…。

しかし、静奈に心あたりがあるわけなかった。