胸の痛みも、後悔も。
愛しているからこそだと認めてしまえばそれだけでずいぶん心は軽くなった。


それでも。


最後に見た、あの泣き顔が頭にこびりついて離れない。






「…あの人間が俺の伴侶といったな」


「そうじゃ。それだけは変わらぬ」


「………無理だ。俺は二度と透子に会うつもりもない。…だから、逃げてきたんだ。あいつの血を啜ってしまって、傷つけたから」






そう言う俺に、もう婆は何も言わなかった。


俺はしばらくそのまま動けなくて、それでも心の奥の透子に語りかけていた。


―――好きだ、と。