木々が揺れた。 柔らかく頬を掠めていく風にさえも俺は透子の面影を感じてしまう。 温かい気持ちと背反する苦しさ。 早く解放されたかった。 胸の奥を這いずるこの感情に名前を付けて、さらに深いところに封じ込んで、殺してしまいたかった。 なのに、なのに――… 「………殿下がその娘を愛したときに呪いが解けるよう、妾は呪を結んだのよ」 ―――あ、い…? これ以上耳障りの悪い言葉があるだろうか。 そのとき、俺の心は軋むように音を立てて。 こぼれそう、だった。