「おや、お早いお帰りだったねぇ」
頭上からのいきなりの声に日向が構え、俺はそれを制するように手をかざした。
「…婆め。相変わらずだな」
「ヒヒッ!まぁよかろ。―――ほれ、そこの東屋に案内しよ」
婆が近くを指せば瞬時に小さな東屋が出現し、同時に婆も移動していそいそと茶の用意を始めている。
この婆はいつもこうだ。
やることなすこと常人の斜め上をいくが、魔力だけは魔界一で。
「…殿下。実は私、婆様にお会いするのは初めてなのですが…」
ひそひそとそう言ってくる日向に、俺はため息をついて答える。
「いつものことだ。…慣れろ」

