―――ヴァンパイア領には大きな森がいくつかある。
一番大きな森の中には王の屋敷があり、通称“王の森”と呼ばれている。
その森の入口にそびえ立つのは執務塔があり、王侯貴族がその周りに居を構える。
そして、王の森に次いで大きな森の中に婆の住処があった。
「婆。…和泉婆!いるんだろう!?」
この森は婆の許可なく侵入したものを永遠に外に出さない魔の森。それを知っているからこそ、俺は森の入口で声を張り上げ婆を呼んだ。
すると、森の草木ががさがさ揺れ始め道なき地面に道を創る。
「…行くぞ」
俺はそう言い、導かれるままに森の奥に向かっていった。

