どうしてこんなに後悔してる?
人間の血を啜ることなど、ヴァンパイアにとっては当たり前のことじゃないか。今までだって数え切れないくらいそうしてきたじゃないか。
…わからない。
押し寄せる後悔の念に押しつぶされそうになった俺は、うつむき両手で顔を覆い息を吐いた。
こんな顔、誰にも見られたくなくて。ヴァンパイアの王となるべき自分が他人にこんな悩み苦しむ様を見せてはならないと、…理性がそう言っていた。
「殿下、婆様の屋敷に向かいませんか?呪いが解け魔界に戻った折りには顔を見せに来るように、と言付かっていたことを伝え忘れておりました」
するとそのとき、あぁとぼんやりとした声に続いて日向がそう言ってきた。
その声に俺は弾かれたように顔を上げる。
………そうだ、婆なら。
婆なら何かわかるのかもしれない。その苦しみも、後悔の理由も。

