「…いつお帰りに?」


予想通りの質問に、俺はあらかじめ用意していた模範解答で返す。



「ついさっきだ」


「―――では、呪いは、…解けたのですね…?」


日向の問いかけに俺は頷き、再び天井を眺める。






「あいつの、―――透子の血を啜った」


そう言った瞬間、部屋の空気が凍った気がした。




白い首筋に残してきた傷跡。甘露のように甘い血の味。
涙で濡れた、透子の顔。


全部全部脳裏に刻み込まれてしまって、こうして不意に甦って俺を苦しめる。
…人間風情の血を啜って、こんな風に後悔するのは初めてだった。