そんなこんなで大学を出た私たちは駅までの道のりを進んでいた。



「ねぇ。いい加減離してよ」


相変わらず腰に回された腕のせいで少し歩きづらい。
だからそう言ったのに、常陸はなぜか眉間にしわを寄せて。



「断る」


「なんでよ。…アンタは慣れてるのかもしれないけど私は注目なんて滅多にされないんだっての」


ため息混じりでそう返すと、頭上からは何回か口を開いては閉じるを繰り返す常陸の息づかいだけが伝わってきた。



「………透子に触れていると不快感が和らぐ」






―――恥ずかしそうに小さな声でそう言った常陸。それを聞いてまた鼓動が速まっていく私。


原因不明のこの雰囲気の、原因が分かるのはもう少しあとの、話。