そう言うと、その箱だけを残して婆さんの姿が消えた。



「あっ………!」


窓の外をのぞいてももう誰の姿もない。私はその箱をただ握りしめ、婆さんの話を反芻して。


―――きっと、今でも忘れられないんだ。
じゃなかったらあんな顔しない。…日中、空を見上げたのもそう。空の上に、その人がいたからなんだ。






「透子、待たせ―――…って、どうした!?」


部屋の扉が開く音と同時に振り返った私が泣いていたから常陸はすぐに私のそばに駆け寄って、私の涙を拭う。



「常陸」


………私は、何があっても常陸のそばを離れないよ。
そんな想いを込め、背伸びをして初めて自分からキスをしたのだった。