「実は透子様が眠っている間にも解毒処置は進めていて、これで最後になります」
グラスを私の座っているイスの向かいにあるテーブルに乗せながら日向さんはそう言い、私の隣に片膝を床につけてしゃがみ込む。
そうして、私を見上げるような体勢を取った。
「…これが終われば、明日の昼には人間界にお送りいたします。最後に何か聞いておきたいことはございますか?」
“最後”。
その言葉に、心が軋む。
「…そういえば、安芸はどうなったの?」
―――常陸のことを聞きたかった。
でも今、彼の名前を呼んだらそれだけで泣いてしまいそうで。
だから私はごまかすように安芸のことを訊ねた。
…日向さんも察してくれたんだろう、困ったように笑んだその表情が優しいものに見えた。

