透子だ。
透子がいる。
―――あの日と変わらないはずなのに、その瞳は俺を映さずにどこか虚ろで。わずかながらやけに甘ったるい香りを纏う。
何も言わずただ、透子は俺じゃない他の男の腕に抱かれていた。
「………この香り!」
香りの正体に気づいた俺がそう叫べば、若狭殿は目を細めて。
「もう気づいたのかい?楽しみはもっと長引かせたかったのだけれど」
「………貴様、ふざけるな!白蛇は根絶やしにされたはずだ!」
なによりどうして。
どうして透子がここにいるんだ。
「―――――俺の主、…若狭様は俺だけを助けてくれたんだ。だから俺は、主のために透子をさらって毒に浸した。………透子には主以外の声は届かないよ」

