「…殿下。どうしても飲まれませんか?」
例の晩餐会が行われる日の、出発直前。
朝から何か言いたげだった日向を問いただせば、そんな一言が返ってきた。
「飲まない。何があろうとも、だ」
「―――しかし!殿下の魔力が弱っている状態で若狭殿の屋敷に向かうのはあまりにも…」
わかっている。
透子の血を啜って以来誰の血も口にしていない俺の、魔力の弱まりなんてわかっているんだ。
「…わかっている。それがどんなに愚かで、馬鹿馬鹿しいことくらい」
俺がそう答えれば、もう日向は何も言えない。
馬車の中での会話だったため、若狭殿の屋敷はもう目前。
俺は静かに腕を組み、ゆっくりとまぶたを閉じた。

