「う、………うるさい!貴様はこれを取りに来たんだろう!?早く持って行け!」




―――あぁ、顔が熱い。
透子が好きだと自覚してからというものの、あいつのことを思い浮かべるだけでいつもこうなる。しかもそれを側近に見られてしまっていると思うと尚更頬に熱が集まってしまう。


恥ずかしさから声を荒げて机の上に堆く積まれた書類を叩くと、日向は苦笑いを浮かべていて。



「そんなに愛していらっしゃるなら会いに行けばよろしいのに」


どこかたしなめるような調子の声に、俺は決まった返事しかしない。



「……………会わす顔などない」


わかっているはずの日向はそれでも数日おきにこの手の話題を蒸し返して、俺はそのたびにこう答えることしかできなくて。


…そうして、透子の元を去ってから数週間が経とうとしていた。