宿に着いて、車を降りると、私は目をキラキラ輝かせた。
言葉通り、とても大きくて立派な旅館。
風情のある景色、広大な敷地、落ち着いた雰囲気の旅館に、感動して手を握りあわせる。
「入ろっか、カナちゃん」
「うんっ…!」
中に入ると、さらに豪華な内観に驚く。
こんな凄いところ、私一人では絶対に来られなかった。
雪夜が、女将さんらしき人に「予約してる白石です」と言えば、手厚く歓迎され、部屋に案内される。
案の定部屋も広くて景色もとても良くて、私は子供のようにはしゃいだ。
凄い凄いっ…!
露天風呂も付いてる…!
外を眺めると、大自然が視界に入り、わぁっと声が漏れる。
澄んだ空気をめいいっぱい吸い込み、息を吐き出した時。
後ろから、ぎゅっと抱きしめられる。
雪、夜…?
ドキっ、と高鳴る鼓動。
「喜んで…もらえた?」
耳元でそう囁かれ、ビクッと身体が震える。
耳が熱くて、もう心臓がうるさすぎて何も考えられない。
「うん…こんな素敵なところ連れて来てくれて…ありがとう」
雪夜の方を向けば、顔が至近距離になって思わず逸らしたくなる。
それでも、私は雪夜の熱い視線から目を逸らさず、微笑んだ。