―――そして、出発の時。

 キャリーは、馬車へ乗り込む途中、
 そばかすまるけの、茶髪のメイドにとある手紙をこっそりと渡された。

 ・・・ドロシーだ。

 「行ってらっしゃいませ!」

 総勢50人ほどの使用人が、一斉に声を合わせて言った。




 馬車の中では、シーンと冷たい空気が張り詰めていた。

 正直、気分が悪くなったキャリーだが、手紙の事を思うと平気だった。

 ハンドバックの中に、こっそり隠してある二つの手紙。

 (この手紙は、あっち(東の国)へ行ったら読もう。)

 生まれ故郷の我が国は、やはり離れがたかったが、

 残念な気持ちもあったが、早く手紙が読みたい気持ちもたくさんあった。

 だが、
 
 「・・・当分、よろしくお願いします。」

 父と母へ言った、キャリーの一言。

 少しも思っていたわけではないが、正直な気持ちでもなかった。

 無駄に微笑んだ父と母の顔を見て、

 キャリーは気分が優れないのだった。


               第十一話(完)