泣き合っていると、階段を上がってくる足音が聞こえた。

 「「!」」

 ドロシーは、アゲハ蝶に変幻して、窓に近い木にとまる。

 「失礼します。」

 小さな幼女のメイドの声。

 「どうぞ。」

 その幼女の正体は、ミーナだった。

 グレープフルーツ色の髪を揺らしながら、ドアをそっと開いた。

 「ミーナ。」

 「キャリーお嬢様ぁ・・・。」

 可愛いその瞳に、今は涙であふれかえっていた。

 「おいで?ミーナ。」

 キャリーは両手を小さく広げると、ミーナは飛びついてきた。

 「行っちゃうんですか・・・?・・・行っちゃうんですよねぇ・・・。」

 「・・・うん。ほんのちょっとだけだよ。また帰ってくるから。」

 ミーナは、キャリーを見上げた。

 「私・・・がんばってメイドさんの仕事しますっ!副メイド長ぐらいになっていま     す!」

 「東で応援してるわ。私が帰ってくる頃には、ミーナも大きくなっているわよ。
  きっと。」

 キャリーは、笑顔で微笑んだ。

 ミーナの顔は、晴れ晴れとしていて、頬には涙の一粒もなかった。

 「うん!・・・じゃなかった、はいっ!」

 「フフ・・・その調子っ!」

 二人は笑い合い、少しするとミーナは部屋を出て行った。