キャリーは、東の国へ旅立つための準備をしていた。

 すると、ノックの音が聞こえた。

 「失礼します。今、よろしいでしょうか?」

 聞き覚えのある声。だが、この屋敷のものではない。

 「えぇ、いいわよ。」

 キャリーは、迷わず答えた。

 ガチャ・・・。

 扉を開けたのは、とあるメイド。

 そのメイドがドアを閉めた瞬間―――・・・。

 首から上が、変幻した。・・・いや、“戻った”のが適切かもしれない。

 「・・・ドロシー。」

 それは、大親友のドロシーだった。

 「普段と騒ぎ方が違ったから、腹くくって“メイドさんになって”潜入したんだけ
  ど・・・。
  何?この騒ぎ。」

 尋ねるドロs-。だが、明らかに何か知っている様子だった。

 「知ってるんでしょ?」

 「・・・。」

 うつむき、曇った表情のドロシー。

 「・・・アンタとも、当分おさらばね。」

 キャリーはそういうが、もう二度と合わないぐらいに落ち込んでいる。

 シャインからもらったネックレスをゆっくりはずすと、
 少し強めに握りしめる。

 「・・・どれぐらい、行ってくるの?」

 やさしい口調で、ドロシーは問いかける。

 「さぁ・・・。私にも分かんない。・・・でも、短いことは絶対ない。」

 当分、キャリーは誰とも接触させてくれないだろう。

 「・・・だよね。・・・シャインにも、言っとかなきゃ―――」

 「ダメッ!!」

 カシャン―――・・・。ネックレスが落ちる。

 それと同時に、ドロシーの腕を掴むキャリー。

 「・・・言わなきゃ、シャインが裏切られたと勘違いするわよ?」

 「だって・・・だって・・・。私、シャインの事・・・考えないで行きたいから。」

 キャリーの頬には、いくつもの涙が流れている。