「失礼するわよ~・・・っと。」
ドロシーは、部屋中を眺めた。
そこに、キャリーはいた。ベランダのガラス張りのドアを全開にして、
近くの椅子に座り、その目の前の机にほおずえをついていた。・・・反対側を向いて。
「珍し。ドアから入ってくるなんて・・・。」
キャリーは振り向かずに言った。
「誰にも見つからなかった?」
そう言って振り返るキャリー。
「小さなメイドさんに見つかっちゃいました~。」
申し訳なさそうに、えへへと舌を出すドロシー。これまた珍しい。
「―――ッ・・・!!・・・バカ。」
そういって、プイっと知らんぷりするキャリー。
「・・・この事は厳重に。小さなメイドさん。」
キャリーは無愛想に、そう言った。
「はっ・・・はい。」
うつむくミーナ。
「・・・主人の前で顔を見せないなんて、どうゆうこと?」
ビクッと肩を動かすミーナ。
「・・・3回目は・・・無いって言ったわよね?」
ミーナを睨みつけるキャリー。
今日は、格別に機嫌がよろしくない様子。
「はい・・・。屋敷から出てきいきます。・・・今までお世話になりました。」
「お世話するほどいなかったけど―――・・・。」
シュンッ―――・・・。
そう言いかけた時、キャリーの目の前に、ドロシーが瞬間移動してきた。
何よ?―――そう言う間もなく、キャリーの頬に、ビンタが飛んできた。
「ッ―――――・・・!!!何すんのよ!ドロシー!!」
キッと、ドロシーを睨みつけるキャリー。
「・・・あんたの機嫌ひとつで、人の人生変えるような事、あたしが許すとでも思って る わけ?」
細くも美しい瞳で、冷ややかに見下ろす・・・いや、見“下す(くだす)”ドロシー。
「あっ・・・あんたには関係ないでしょっ!!」
そういった瞬間―――・・・。


