すると、ドロシーはキャリーの部屋の前で止まり、
 ドアノブに手をかけようとした。その時―――・・・

 ガシッ!と、その手に小さな手が重なった。

 「なによ?小さなメイドさん。」

 ミーナは、ずっと口を開かなかった。
 が、キャリーの部屋に入るのを拒んだ。

 するとドロシーは、自分の額をミーナの額に当てた。

 「?!」

 驚きを隠せないミーナは、ただ頭上にはてなマークだった。


 ドロシーはなにかに触れて、集中させると、それの昔の記憶が読めるのだ。
 そして、その触れる部分が、記憶をより思い出させるところだったら、
 もっと鮮明に読めるのだ。

 ドロシーは、少しの間くっつけていたが、ゆっくりと離した。

 「なるほど・・・。あのバキャリー八つ当たりしたのね・・・。」

 「おっ・・・お姉さん、記憶が読めるのっ?!」

 さらに驚くミーナ。

 「ホホホ~。っていうか、八つ当たりされてるって、自覚してるのね。」

 うっ・・・と後ずさるミーナ。

 「安心して、言わないから。」

 ドロシーがそう言うと、ミーナはほっと胸をなでおろした。

 「お姉さん、キャリーお嬢・・・キャリー様とずいぶん親しい感じ・・・」

 「まぁ~・・・ちょっとした、幼なじみ?かな?一応。」

 そう言って、クスッと上品に笑うドロシー。

 「そっ・・・そうなんですかっ?!無礼をっ・・・すみませんっっ!」

 ペコペコ頭を下げるミーナを、面白そうに眺めながら、ケラケラ笑うドロシー。

 「いいのよ。さっ、入りましょ?バキャリーの巣に。」

 ・・・綺麗で、上品で、容姿端麗なのに、言葉遣いが悪いのは、きっとドロシーだけ
 だ。

 「はっ・・・はい・・・。」

 ドロシーは、今度こそドアノブに手をかけ、扉を開いた。