レース邸の廊下では、ドロシーがこっそり侵入していた。

 「誰も・・・いないわよね・・・?」

 ドロシーが、角をまがろうとすると・・・。

 ドンッ―――・・・。

 鈍い音が、ドロシーの腹から鳴り響いた。

 誰かがぶつかったのだ。

 (やばっ・・・!!)

 とっさに、虫にでも変幻しようと思ったドロシーだが、
 ・・・手遅れだった。

 腹に当たったのを見ようと、見降ろしたら・・・

 「子・・・供・・・?」

 それは、あの新人メイドのミーナだった。

 見上げられた大きなまん丸な瞳と、目が合った。

 「えっ・・・?!」

 さっきまでずっと泣いていたのか、涙の跡の上に新たな涙が流れている。

 ドロシーは、とっさにミーナの口を手で塞ぐ。

 「私は悪者じゃないから安心して。黙って私についてきなさい。」

 涙目で、コクンと大きくうなずくミーナ。