「んん・・・?夢・・・か。」

 とある休日の、午前8時半過ぎの事。

 「あ、キャリーお嬢様!お目覚めですかっ?」

 いつもの天使のような笑顔でキャリーに話しかける、新人メイドミーナは、
 その笑顔は、誰しもが和み、癒される。
 ちょうどミーナはキャリーの部屋に入ってきたところだった。

 ―――が、今朝のキャリーはご機嫌ナナメの様子。

 「・・・朝のあいさつ。」

 キャリーは、上半身を起こしながら、口を開いた。

 「はい?」

 「朝のあいさつをご主人様にしない使用人・・・か。
  まだまだよ、“新人メイドさん”」

 キャリーは、ミーナへ不敵な笑みを向ける。
 ・・・が、目は笑っていない。

 「もっ・・・申し訳ございませんでしたっ・・・!
  おはようございますっ。。。キャロラインお嬢様っ・・・。」

 泣きそうなミーナを無視して、キャリーは髪を片手でくしゃくしゃとかき回す。

 「それと、私はあなたより年上なの。お嬢様なんて呼ばないでくれる?」

 「さっ・・・左様であります。キャロライン様・・・。」

 ミーナは、瞳いっぱいに潤んでいる涙を、頬に流すまいと、
 必死に耐えている。痛々しい光景だ。

 「・・・三回目はないから。覚悟してなさい、ミーナ。」

 「はいっ・・・。失礼します・・・。」

 ドアへ向かう途中で、ミーナの涙は薄紅色の頬につたってしまった。
 が、嗚咽をあげていないミーナ。

 「・・・その涙でグシャグシャのバカっ面を見せないでくれる?
  不愉快よ。さっさと私の部屋から出てって。」

 「うっ・・・うぇっ・・・はっはい・・・。」

 ついに、嗚咽をあげてしまった。

 「不愉快って言ってんでしょっっ!!!!!!
  うるさい!!メソメソガキみたいに、叱られたぐらいで泣くなら
  よそでしてくれないかしらっ?!出てって!!」

 「うわああああん!!」

 ミーナは、声をあげながら、部屋を出て行った。