ドロシーがディエアヨルド国に着いたのは、
  もうすっかり日の暮れた夜だった。
  時計は9時を指している。

  レース邸・キャリーの部屋では、キャリーがドロシーの帰りを待っていた。

  が、キャリーはうとうとしていて、机に顔をうつぶせている。

  すると、キャリーの周りに薄紫の霧に包まれた。
  もうこの霧の香りに慣れたキャリーは、瞳をうっすら開く。
  この世界、どこへ行ってもこの霧の香りはないだろう。

  甘い、お菓子ではない香り。少し鼻にツンとする感じが、キャリーは嫌っている。

  「んぁ?・・・ぁ!!」

  うっかり寝ていたキャリーは、少し照れながらエヘヘと笑う。

  「ただいま。シャインもウォレストも案外いい人だったわよ。」

  少し微笑みながら、キャリーに言う。

  「もう呼びつけで呼び合う仲になったの?!」

  驚くキャリー。それと同時に少し羨ましそうにドロシーを見る。

  「ハァ・・・ホントにその上目遣いをシャインにも見せたいわ。」

  「ふぇ?なんで私なんかの上目遣い見せるのよ?何もないのに。」

  キャリーは、人差し指を下唇に添える。

  「・・・バキャリー。鈍感にも程があるわよ・・・!」

  「バっ・・・なによぅ。。。」

  うぅと涙目のキャリー。
  意味も分からずバカ同然の言葉を言われたのだ。
  悲しくなっても当然だろう。

  「・・・キャリーってさ、シャインとどれぐらい会ってないの?」

  「1年半ぐらい・・・かな?」

  首をかしげるキャリー。

  「彼も今は成長期。顔も身長も変わってるかも。」

  「わっ・・・わかってるよ?それぐらい・・・でも・・・」

  するとドロシーは、

  「・・・似顔絵描いてあげるわ。」

  「本当っ?!ありがとう!」

  ドロシーは、絵がずば抜けてうまい。
  
  「まってね・・・。」


  そう言いながら、ドロシーはキャリーに紙とペンを借りた。

  サラサラと、一本一本線を大切に描き始めた。