キャリーが、城で一番大好きだった場所。
一番安心した場所。
一番落ち着く場所。
一番黄昏れる場所。
だが、キャリーはそれでも我に戻らない。
・・・いや、“戻れない”。
「お兄ちゃん・・・?どこ・・・?」
キャリーは呟く。
元姫の、キャロライン・レースの、綺麗なパステルピンクの瞳に、気力はない。
誰もが羨ましがった綺麗な宝石のようなパステルピンクの目は、いまはくすんだ目。
キャリーが、フラフラと歩いていると、少し離れたところに・・・。
ギルがいた。
「お兄ちゃん・・・。」
キャリーは、ギルの方へ足を進める。
クシュ...ペタペタ...クシャ...
芝生と土を踏むキャリーの裸足の足音が、庭園に響く。
すると、とある崖についた。
ギルと思われる半透明な“ソレ”は、
地面から足を離し、宙へ飛んだ。
そして谷底の真上に浮かんだ。
「お兄ちゃん・・・今逝くよ・・・。」
キャリーは谷底に向かって足を一歩踏み出した――――・・・。


