エデンの園の秘密な果実


 「キャリー!!キャリー!!」

 シャインは、必死にキャリーの名前を呼ぶ。

 走る。叫ぶ。止まって息を整える。また走る。

 それを何回繰り返したのだろう。

 (どうしよう・・・。マジでキャリーがいなかったら・・・。)

 キャリーは、誘拐されていない。シャインはそう思った。

 仮に誘拐されたとしても、知らない人が目の前に現れたら、キャリーは叫ぶに違いない。

 (俺の・・・せいで・・・。)

 シャインは、もっと青ざめた。

 「うっ・・・!!!!!」

 吐き気がシャインを襲う。

 「ゲボボボッッ・・・・ゲボッァ・・・!!!!」

 嘔吐をしてしまった。

 ザッッッ――――・・・!

 シャインはひざまついた。

 「ゲボッ・・・ガハッ・・・うっ・・・ゴボボッ―――・・・。」

 次々と口から出てくる、胃液の混ざった嘔吐物。

 シャインは目に涙を浮かべるほど、胃液特有の塩酸が喉を刺激する。

 すると、シャインは自分の腹を思いっきり殴った。

 「ゲボボボボァァァァアアア!!!!」

 今までで一番の排出。

 が、顔を上げたシャインの瞳(め)には、覚悟を決めた焔が宿っていた。

 叫び・不安・恐怖を、嘔吐物と一緒にいっぺんに吐き出したようだ。

 ペッと絡んだ痰(タン)を吐くシャイン。

 (みっともねぇ・・・。)

 そう思いながら、シャインは自分の頬を両手でパァンッ!!とぶっ叩く。

 「うしっ・・・!!!!」

 そう言って、シャインはまた、走り始めた。