「何よっ・・・それっ・・・!!」

 ドロシーの顔は怒りに満ちている。

 「だから、“コレ”とお兄ちゃんの事・・・言おうと思ってるの・・・。」

 キャリーは、苦し紛れに言う。

 「これで・・・フラれたら・・・、ちゃんとけじめはつけるよ。」

 苦笑いで、ドロシーを見るキャリー。

 「バキャリー。」

 「なっ・・・私は本気でっ―――・・・」

 キャリーが言いかけた時、ドロシーは両手でキャリーの顔をおさえた。

 「バカッ・・・!!アイツを信じなさいっ!!」

 そう言って、もとのメイドの姿に変わった。

 「・・・えっ・・・?」

 「・・・さぁ。ドレスをお選びください。」

 キャリーはあたりを見回すと、さっきまでの汚物もスッキリ消えている。


  バタン・・・。

 「っ!!」

 キャリーが振り返ると、新しいメイドが入ってきた。

 だいぶ大人な女性だった。

 「あら、ドール。あなたはやっぱりメイドに向いてるわ。」

 「私にはもったいないお言葉ですよ。メイド長。」

 どうやら、この女性がメイド長らしい。

 (えっ―――・・・?)

 『バイトよ』と口パクで言うドロシー・・・いや、“ドール”。

 ドールとは、おそらくドロシーの偽名だろう。

 「これにします。ドールに着せてもらってもいいかしら?」

 キャリーは、わざとよそよそらしく言う。

 「えぇ。結構ですよ。さ、ドール、着せて差し上げなさいな。」

 「はい。承知しました。」

 ニコっと笑うと、“ドール”はキャリーのドレスを脱がしてゆく。

 「では、私(わたくし)は退席しますわね。」

 きっと忙しいのだろう。メイド長は出て行った。


 「・・・ねぇ、ドロシー?」

 「ドロシーとはどなたでございますか?」

 サラサラとコルセットのヒモを解いていくドール。

 「・・・いいえ。気にしないで。」

 二人は、悪魔で“メイドと姫”。

 余計な関係など、必要としない。

 「・・・ありがと。」

 キャリーは。ドールに言ったのか・・・それともドロシーにいったのか・・・。

 それは、キャリー自身もわからなかった。


 新しいドレスに着替えると、キャリーと“ドール”は、
 晩餐会のある、大きな会場に行った。

              第十七話(完)