「あんたは何も動きも、飛びもしてないじゃない。」

 
     「”ドロシー”」

 
  ”ドロシー”と呼ばれる者は、不敵かつ美しい笑みをキャリーに向けた。

  「でもそれ(ピーチ)を出したのは私よ?」

  ドロシーは右手の人差し指を半円にクルッと回した。

  すると、たちまちピーチは掌(てのひら)サイズの薄いピンクの紙に変幻した。

  そして・・・キャリーの顔は少し青ざめた。

  「やっぱり”それ”は何度見ても見慣れない・・・。」

  「見慣れなさい。バカ。」

  「バカとは何よ!食糧配給ストップしてやるわよ!」

  「なっ!卑怯よっ!バカ姫!」




   国民と姫の会話には聞こえないが・・・。

   ドロシーはディエアヨルド王国の人民。

   だが、少し訳ありだ。