「まあ、姫様?なんという髪をしていらっしゃるの。気でもお違いになられましたのですか?」
部屋につくなり、侍女が嫌味を言ってきた。
「何をいっているのかしら。これはあなたに整えていただいたものよ」
香蘭は負けずにそう言い、小袖の上から袿を羽織った。
やはり日が暮れてくると肌寒い。
侍女が部屋の灯りをつけるのを見て、香蘭はまた夜が来るのだと思った。
「もういいわ。下がってちょうだい。一人になりたいの。」
「ですが姫様。わたくしはここであなたの子守りをするように仰せつかっておりますので。」
香蘭が侍女に下がるように言いつけると、どうしても香蘭に嫌がらせをしたい侍女は食い下がる。
子守りですって。
「いいから下がってちょうだい。もうお兄様をここに呼んであげないわよ」
そう言うと、侍女は、それは困るという顔をして、しぶしぶ部屋を下がる。
侍女たちは図々しくもなんとか珀伶の気を引こうと必死だから、珀伶がこの部屋に来なくなると自分たちもつまらないのだ。
香蘭がこの方法を思いついたのはつい最近のことだが、効果は覿面だった。
侍女が部屋を下がると、香蘭はため息をついて障子を開いた。
夕暮れの空はいつもせつなく、香蘭の胸を苦しくさせる。



