キィ、と音を立てて扉は開いた。


質素な部屋だった。


そっと部屋を見渡すと、部屋の隅に、寝台があった。


そして寝台の上に憂焔が横たわっているのを、香蘭は見つけた。


香蘭ははっと息を飲んで、小走りで寝台に近づくと憂焔の顔を覗きこんだ。

憂焔はどうやら、眠っているようだ。


「憂焔?」


そっと声をかけてみたが、憂焔はピクリともしない。




秋蛍は目を覚ましたと言ってはいたけれど。



香蘭は急に不安になり、寝台に体を乗り出して憂焔の手を強く握った。


「憂焔、憂焔!私よ、香蘭。ねぇ、起きてるんでしょ?」


体を揺すってみても何の反応もしない憂焔に、香蘭はますます不安が募り、憂焔の手を握る手にさらに力をいれた。

まさか、秋蛍が自分をからかったのだろうかとも思い始めたとき。


「ぷっ」


「え?」


耳がおかしくなったのかと、香蘭が眉を寄せたのと同時に、眠っていたはずの憂焔が勢いよく体を起こした。


「あっはは、もう無理だ、面白すぎる」


目を丸くする香蘭をよそに、憂焔は腹を抱えて笑い転げている。

香蘭はただ、ぽかんとその様子を見つめていた。


「もう少し我慢していようと思ってたけど。まさかこんなに心配してくれるなんて……」


そこまで言って、憂焔ははっと言葉をとめた。


そして、後悔した。香蘭がはらはらと、何も言わずに涙を流していたのである。