長く続く廊下を辛抱強く進んだ。



香蘭たちが通ると、近くにいた者たちが立ち止って頭を下げる。


秋蛍のこれまでの態度からも薄々感じてはいたが、秋蛍はそれなりに位の高い人物のようだ。


香蘭が感心して人々を見ていると、頭を下げている人たちの中で一人だけ、真っ直ぐにこちらをみているものがいた。


銀色の髪をした五つくらいの幼い少女で、射るようにこちらを見つめている。


不思議に思ったが、秋蛍は全く構わずに通り過ぎていく。

彼の性格上、敬えられようが睨まれようがどうでもいいことなのかもしれないが、香蘭は銀髪の少女が気になって仕方がなかった。


「ついたぞ。……何をぼんやりしている?」


「えっ。いえ、なんでも」


少女の姿が見えなくなっても振り返って気にしていた香蘭は、危うく秋蛍の背中にぶつかるところだった。


秋蛍は一瞬だけ眉を顰めたが、直ぐに気を取り直したようだ。


「この奥にいる」


秋蛍は扉の奥を指し示し、一歩下がった。


どうやら彼は、香蘭に一人で入るように言っているらしい。

秋蛍は意外と気を遣うことができる人物だったということを、香蘭は改めて思い出した。


扉を前にして、心臓がまた強く鳴りだすのを感じた。


あの、襲われた日から憂焔と一度も会っていない。

最後に見た彼は香蘭を守り、背中から血を流していた。



どきどきと鳴る胸を片手で押さえながら、扉をそっと、開いた。