「大丈夫よ、お兄様。わたし、剣の腕には自信があるから……」


互角に戦えるとは思わないが、傷をつけるくらいはできるだろう。


父を止めるためにはこうするしかない。


珀伶は押し黙ったまま、自分の剣を香蘭に差しだした。


香蘭はそれを受け取ると、鞘から引き抜いた。

改めて鈴王と正対する。

こうして父と向き合うのは初めてだ。


鈴王が香蘭に近づくことはあまりなかったから。


「鈴王さま……」


トオルが掠れた声を出し、切なげに鈴王を見つめている。


「香蘭、殺すつもりで来い」


先手を打ったのは鈴王だった。


寸でのところで躱したが、剣先が着物の袖を切り裂いてぞっとした。

どうやら手加減は一切しないつもりらしい。


しかし弱気になっている暇もなく次々と攻撃される。


こちらから攻めることもできないまま、香蘭はただ躱すので精一杯だった。


いつの間にか階段のところまで追いつめられていて、香蘭は段差に足を取られてよろめいた。

その隙を鈴王が見逃すわけもなく、すぐさま真上から剣を振り下ろしてきた。


「香蘭!」


珀伶の、悲鳴のような声があがる。


香蘭は躱せないと判断し、剣を打ち合わせた。


金物の合わさる高い音が響いた。


しかし力の差は歴然で、香蘭の剣は打ち払われてしまった。


その衝撃で香蘭は地面に倒れ込んだ。

剣は香蘭から少し離れたところへ飛ばされ、手を伸ばした香蘭を鈴王が剣で制した。


「どうした、香蘭。大きな口を叩いていたのにこの程度か」


「……っ」